米国におきましてはVES(Visual Effects Society)と呼ばれる協会が組織され、ハリウッドの一流VFXスーパーバイザーを始め、この業界に従事する国内外も含めた約2000名を超えるメンバーが在籍しています。
http://www.visualeffectssociety.com/ (米国ビジュアルエフェクトソサエティのHP)
しかしながら日本には、撮影、照明、脚本などと同じく映画に欠かせない技術に匹敵するパートでありながら、こうした職種を営む技術者や関係者に特化した団体はありませんでした。
私は、2007に渡米し2009年に米国VESの会員となり、その活動に参加する機会を得ました。その後、ある方から米国VESの日本支部のようなものを作ってはどうかというお話をいただき、それ以来、日本でこの業界の関係者の方々にいろいろとご意見を伺うようになりました。私自身この業界に20年以上関わっておりますが、日本にそのような団体が無いということに今更ながらに気づかされただけでなく、特に感じましたのは、今日の日本の業界が様々な問題を抱えているということでした。こうしたことを聞き知るにつれ、そのような問題を一つ一つ解決していくには、この業界に関わる方々の横のつながりや連帯感を強め、業界活性化に向かうための様々な問題点を論じ合える場を作ることが必要であり、そのための組織として、VFX-JAPANの発足が急務であると考えるに至ったのです。
デジタルコンテンツを生産する技術的なノウハウや基盤技術の多くは、VFX技術者によってもたらされています、しかし実際のCG映像等を見た一般の人々には、その影に隠された人間の功績や努力というものまでは中々伝わりません。そういった映像は特に人間の努力がいらず、まるで機械や道具が勝手に作ったかのような印象を持たれている傾向にもあります。特に優秀なVFX職人になればなるほど、そこに人間の存在を感じさせないような自然な映像を作ります。それはまさに職人芸であり、彼らの存在はそれ故に縁の下の力持ちとなっております。こうした中で、日本国内の優秀な人材が海外にどんどん流出していることなども鑑みますと、魅力的で活気のある業界作りと、そうした人々への賞賛が今こそ必要だと思われます。昨今の経済恐慌とも相成って、この業界の存続も大変厳しい状況となってまいりました。その中でも一番の心配は、この業界に夢を抱いてやってくる若者が先細りしてしまうのではないかということです。若者が入ってこない業界に未来はありません。そういった意味でも、業界全体の活性化を図り、未来ある若者達に向けてこの仕事の魅力や、優秀な才能の存在を世に知らしめることも大事なのではないでしょうか。
VFX-JAPANを作ることにより、こうした業界に携わる人々の、功績を称えるイベントを行うなどして、人々の意識や関心を高め、業界全体を盛り上げ、この業界に参入したいと思っている若者達に希望や憧れを抱かせるような業界作りを目指すための後押しをすることができれば、引いては我が国におけるコンテンツ産業の育成、発展にも繋がるのではないでしょうか。
VESのイベントで特に印象的だったのが、フランスの一流VFX会社が大挙してやってきたハリウッドへプレゼンテーションでした。このようなことをいつの日か日本からも行いたいと強く思いました。
プロダクションが担当したカットやメーキング映像を営業用に使用する際に、中々許可が下りないという状況が多々あるというお話を伺いました。米国では、「その映像を販売するのではなく、プロダクションの営業目的用に使用する際には、権利者の名前を明記した上で、プロダクションが制作に関わったその一部の映像使用、並びにメーキングの公開を許可する」というようなことが認められており、それによって、プロダクションのデモリールなどでの映像使用が許可されています。ところが、日本では大手のタレント事務所さんとの力関係(これも製作会社との契約内容によるのですが)などにより、タレントさんの写りこんでいる映像や有名なキャラクターなどの素材をメーキングビデオなどに収録できず、デモリールの閲覧は社内のみといった形で、外部への営業ツールの作成に苦慮しているプロダクションが多いようです。特に、海外での営業の際にWeb上でデモリールやメーキング映像が使用できないというのは厳しいと言わざるをえません。
この状況を少しでも改善するには、日本でも、制作担当したプロダクションの営業目的での著作権物の使用に関するガイドラインを業界標準で作るべきではないかと考えております。それにはまず、業務を委託した際の契約書の中で一文を明記するということで、版権元様との合意が図れるのであれば、そのような取り決めを盛り込んでおくやり方がよいのではないでしょうか。
こうしたことは中々、弱小のプロダクションや個人が小さな声で言いましても、いままでに慣習のない事を覆すのは中々困難ではないかという意見もいただいております。そこで、様々なプロダクションの総意であるといった形で、協会からの取り決めのような書式を作ることによって、両者納得の行く形で合意が求められることを期待しています。
これは中々大それた提言ですが、そもそもVFX-JAPANを発足させようと考えた一つのきっかけであり、その目標は、こうしたことを解決する為の手段であると思っています。イギリス、オーストラリア、カナダ、ニュージーランドなど、諸外国での国の援助が、特にハリウッドからの受注仕事の増加につながっていると聞いております。まずは、どのような援助が実際に行われているかも含めて、現状の実態を把握するところからスタートする必要があると思います。
もちろん、このような大それた事を私自身だけの力で出来ることではとうていありません。それには、この業界に関わる皆様のご賛同とご尽力がまず必要です。
VFX-JAPAN発起人
秋山貴彦
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